5/14/2026 @南青山MANDALA こまっちゃクレズマ+柳原陽一郎 ライブレポート

このライブを企画していただいた南青山MANDALAの津山氏に御寄稿頂きました。

「こんなにたくさん!?」
 
リハーサル前に、セットリスト見た時に思わず口から出た言葉。「普通、そう思うよね」と、こまっちゃクレズマの松井さんが受けてくださった。というのも初顔合わせのイベントでセッション曲が半分以上だったので!
 事前に一回だけの少し長めのリハーサルというのは知っていたとしても、多くて5曲できたら嬉しいなぁが、まさかの11曲。2部は全部セッションという非常に豪華?な構成は、言い出しっぺとしての予想をだいぶ超えた形で2組が応えてくださったという印象。これはベテランばかりのメンバーだから短時間のリハーサルで成し得たことなのか?なんて考えていたら、多田さん、松井さんのお話としては、「なんかできちゃったし、もったいないから演奏しちゃおう!」という方向らしい。この「いい塩梅」加減が今日のライブを物語っていたのかもしれない。初顔合わせで「いい塩梅」ができるって、それこそがミュージシャンの歴史を物語っているのかも?

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 スタートは、こまっちゃクレズマから。やっぱりこの空気感!あっという間にその空間を変えてしまう、ちょっと踊りたくなるような大衆音楽的な感覚。みんな(大衆)と一緒に盛り上がりたい!という態度なんだけど、やっぱり滲み出る悲喜交々。それを特別に取り立てないフラットな感じが良いのです。
 こまっちゃクレズマの演奏が数曲あってその最後が「峠の道」。この中で何度も繰り返される「いつか会える、きっと会える」という歌詞が、こまっちゃから柳原さんへのメッセージのように聞こえてきました。お聞きしたら梅津さんの企画で、30年前に南青山MANDALAで一緒にライブをして以来とのことなので、まるで音楽的再会を祝してのメッセージのよう。それに対しての柳原さんのアンサーは、セッションで一曲「となりのクルド人」。まさにクレズマの歴史と通底しているような曲を持って来つつ、柳原さんのウキウキ感と今日のライブの後半への期待感をさらっと見せてくれたような感じ。この2組のメッセージの伝え方の違いがなんともニヤニヤしてしまう。こんなことを妄想する隙間があるライブは楽しい!あくまでも勝手な妄想のお話、というか、この後も全て妄想ですので、悪しからず。

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 そして柳原さんのソロ。今回強く感じたのは、なんだかジェームス・テイラーを聞くような、そんな態度で自分が聞いているということ。これはどういうことなんでしょうか?70年代のシンガーソングライターを聞くあの感じ。伝わらないと思いつつ繰り返しますが、「あの感じ」に接するような姿勢で聞いているんです。なんでしょうね、あの感じって。なんとなく聴きたくなるけど、熱狂的な感じでもなく、気づけばそのCDを選んでしまうような、朝食で納豆がないとちょっと寂しいみたいな、もしかしたらご本人には怒られるかもしれませんが、そんな感じなのです。それはこちらの受け取り側の話なのか? それとも柳原さんの「いい塩梅」加減のせいなのか?もしこの感じ、私も!という方がいたら、ぜひお知らせください。
 ソロの最後は「満月小唄」。特別の日にだけ演奏する、という前置きをして。このMCで思い出すのは、少し前に行われたトークライブのお話。「ソロになって初めてのライブで負けたんだ。『満月小唄』を演奏したりして。迎合してしまった」という所を鮮明に思い出しました。その時に強烈に感動したんです。自分の音楽を模索し続けたある意味受難の10年の、その最初のライブでのこと。それをその時に認めて受け入れたからこそ今の柳原さんがあるのだろうけど、それを率直に告白する潔さ、それに驚いたのです。でも、それってある視点からすれば、真っ当なシンガーソングライターってことですよね。

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 休憩を挟んで、2部のセッション大会へ!
セッションの2組は、僕にはこんな感じに見えました。柳原さんにとっては、踏み出した一歩のつもりが2mぐらい進んじゃうような、どんどん先にいっちゃうような感覚だったのでは?逆にこまっちゃにとっては、なんか面白いことしたい!と罠を仕掛けたところに、一筋縄で行かなそうな柳原さんという珍素材が転がり込んで来てラッキー!どう料理しちゃおうかな?遊び倒しちゃおうかな!と。
 2組の関係で言うと、柳原さんの曲が多いのかな?と思いきや、こまっちゃの曲もたくさんありで、この感じがお互いのリスペクトを感じさせる構成で嬉しい。思春期の「お互いに言わないだけで実は両思いじゃん!」みたいな、「もっと早く告白してれば良かったのに」というお節介なクラスメートの立場で、「あとは二人でよろしくやってよ!」って思ったり。でも実際のところ、お客さんの中である程度の方が同じように思ってくれていたのでは?ちょっとニヤニヤしながら、そこまで一緒にできる仲なの!なんて、二人の付き合いの進展具合に驚きつつ、ドキドキしつつ、嬉しいみたいな、そんな感じで立ち会った方も多いのでは? 
 丁寧に正確に合わせることもとても大切なのだろうけど、「いい塩梅」で進めていくことの面白さ、長年のミュージシャンとしての経歴とお互いの共通項みたいなものがある前提の上でだけれど、どんどんやってみる!的な面白さ。それはもしかしたらまだ見ぬ音楽の新世界へ冒険するための仲間を得たような感覚なのかもしれない。それなりに良いお年のメンツがワンピースのルフィー的な冒険心を忘れてない、なんならずっとそれぞれの中での見果てぬ世界(もしくは深い古井戸の底)を探検してきたけれど、何か?という感じ。それがセッションという形の中でより色濃く見えてきたことが嬉しい。
 
 お客様が帰ったあと、柳原さんとこまっちゃメンバー数人でカウンター前での立ち飲み。ニコニコしながらお話ししている様子は、ライブハウススタッフとしては本人たちも手応えがあったんだろうなぁなんて感じられて嬉しい。ライブと全く関係ない銭湯のお話なんかもしたりして。
 ライブに来れなかった方には、なんだかよく分からない文章かと思います。逆に理解できる方がいたらライブを体験できなかったことに残念な思いを持たれるかもしれません。が、またきっと機会があると思うので、その時をお楽しみに!

文 : 南青山MANDALA 津山朋広 

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